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ペンシルべニア州下水処理場の効率査定にデータロガー

用途: エネルギー査定
産業: エネルギーコンサルタント
組織: Reynolds Energy Services

国家の重要方針である下水処理場のエネルギー効率向上を達成するため、ペンシルベニアのある処理場ではモータの稼働状況を分析する目的でデータロガーを採用した。第一段階としてエネルギーコストの削減と環境ルールの整合性をめざす。
アッパーアレンタウンシップではOnset社製データロガーを使って下水処理施設のモータ稼働時間調査をおこなった。調査の最終目標は情報を収集しエネルギーや汚水流量削減に効果のある新技術や処理方法を選定することにあるという。
このノートはCumberland地方下水処理場がなぜ施設の効率改善を決定したのか、またコンサルタント会社であるReynolds Energy Services社がデータロガーを使ってどのように基礎情報を収集したかを解説する。

 

施設改良の重要性

設備の効率改善決定はエネルギー消費の多い下水処理場のエネルギー削減をめざすという国の政策動向を反映している。CEE (Consortium for Energy Efficiency) によれば、アメリカ全人口の約70%相当を処理する全国15,000ある公的汚水処理場の経費でエネルギーコストは人件費に次ぎ二番目に大きな要素である。ある地方自治体の場合、汚水処理施設のエネルギー消費量は自治体で使用する全エネルギーの35%を占めるという。

 

結果として、いくつかの市や町では施設改良費をARRA(アメリカ再生再投資条例)から資金援助を受ける方向にある。アッパーアレンタウンシップではカンバーランド郡行政府に対しARRAを適用した220万ドルの資金申請を行ったが他にも圧倒的な数の申請があり当初は成功しなかった。

 

エネルギー削減に追加して、アッパーアレンタウンシップのグランサム処理場の改良計画はペンシルベニア州がチェサピーク湾の環境保護のために制定された連邦規準を遵守する助けにもなる。フィラデルフィア西2時間に位置するアッパーアレンタウンシップ処理施設は一日あたり50万~70万ガロンの下水処理を行っている。この処理プラントは1990年に拡張工事が行われ現在、連続バッチリアクター(アクアSBR)方式のシステムを使用している。施設はチェサピーク湾保護に関連した新NPDES排出規定に準拠するため2010年から2011年にかけて更なる改良工事を予定している。

 

カンバーランド郡の支流はサスケハナ川に繋がりチェサピーク湾に流れ込んでいる。サスケハナ川は湾内の窒素、リン酸、ヘドロの主な供給源となっていると見られている。そこで米国環境保護局は湾の汚染制限の方策を考えた。最終的にペンシルベニア下水処理場はサスケハナ川に栄養素を含む排出を行わないということで施設の更新申請の許可を得ることに成功した。

 

データロガーが設備の非効率を暴露 

研究によればアメリカの汚水処理場のエネルギー消費は15%~30%削減できると見積られている。CEEによれば、削減率は施設の規模、型式、使用技術、運用条件などで異なるが、一般的にはモータの更新で2%、プロセス制御を改修することで最大30%の削減ができる可能性があるという。
ファン、モータを使用するばっきプロセスがエネルギーを最も多く消費する。汚水処理装置は電気料金が最も高いときに大量のエネルギーを消費する傾向があるので、最大負荷運転時にばっきプロセス効率が最大となるようにすることが特に重要である。Reynolds Energy Services社はエネルギー削減と環境要求に合致できるような改良型ばっき装置の設置を念頭にアッパーアレン施設の詳細調査を実行した。

 

装置はさまざまな要因で製造者が見積もった性能を常に発揮できるとは限らない。従って現存装置の処理プラントとポンプステーションにホボU9モータon/off データロガーを取り付け“装置の実運転サイクル”の情報を収集したとReynolds社のプロジェクト開発マネージャ、Michael Conchilla氏はいう。

 

調査はばっき装置とポンプステーションなど大型のモータ負荷に焦点を当てた。“記録対象のモータは10台以上あった。それらの運転パターンと1日の運転時間を調べた。多くのモータはonとoff を短時間で繰り返し、切り替え運転していることが分かった。運転パターンがどうなっているか、また累積運転時間はどうかについて知り、年間ベースの運転状況を推測したかった”という。

 

データロガーは小型で、それだけで完全に独立して動作するスタンドアローンタイプなので現場に4週間ずっと取り付けた状態で使用できた。ロガーはACモータが発生する磁界をモニターしてon/offを判定する原理となっている。 

 

“いくつかのモータではモータケーシングが大き過ぎて良好なフィールドリーディングを読み取ることができなかった。このときは単にモータの上に取り付けるのではなくモータ配線箱内のフィーダ部にロガーを結びつけることで良好な結果が得られた”とConchilla氏はいう。

 

データはロガーを回収後アプリケーションソフトHOBOware Proを使ってパソコンにダウンロードし、グラフおよび数表で分析された。そのソフトではExcelなどの数表ソフトへのエキスポートも簡単・迅速に行える。

 

Conchilla氏によれば“各々のモータの年間消費電力を推測するためには、モータ個々の運転パターンを知りたかった。施設では各々のモータ電流値は定期的に収集している。このデータと運転時間データを使ってモータ個々の実消費電力を見積もった。電流値データと運転時間データがあれば電力量は計算できる。計算はMS Excelを使って行った。運転時間データはHOBOwareからExcelファイルに簡単にエキスポートできるので消費電力を簡単に計算できた”という。

 

Reynolds社はその情報を使って施設のどの部分を改善する必要があるのか、どの部分で経費削減が可能なのかを判断する予定で、また新しい機器が導入された後もエネルギーサービス性能契約に基づき、結果確認のためデータロガーは引き続き使用する予定でいる。

 

データロガーのおかげでアッパーアレンは憶測ではなくデータに裏づけされた検証で施設の効率化に向けて動き始めた。“データと喧嘩はできない。それらは24時間何が起こっているかを明確に示している”とConchilla氏は話を締めくくった。

 

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HOBO and Onset are tredemarks of Onset Computer Corporation, Bourne, Massachusetts(USA)

 

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