製品情報

タービン建設のための風力資源予備調査

用途: 風力資源立地評価
産業: 調査
組織: コルゲート大学

1.概要

コルゲート大学における“環境問題の学術的調査と代替エネルギー”と題する環境学セミナーの一環として地理学研究生、経済学者、物理学者がグループを結成し、コルゲートにおける風力発電の潜在性を調査するプログラムを立ち上げた。その調査グループのサブグループである“データ取得と分析チーム”の任務は(1)研究グレードの風力計の確保、(2)風力計の調査ポイントへの設置、(3)調査ポイントの風向・風速データの取得、(4)同一計測期間中の第3者データと比較しモデル化することなどの詳細分析。

 

2.風力計の仕様 

正しい風力データを取得するために風向、風速両方のデータが計測でき記録機能を持つ研究グレードの機器が必要とされた。

 

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Fig.1:HOBO風向・風速スマートセンサー

 

いろいろな選択肢を検討した結果、最終的にオンセット・コンピュータ社製ホボ 風向・風速スマートセンサー(Fig.1)の購入を決定した。購入したデータ収録器(ロガー)はセンサーを最大4個まで接続できる能力があるので他の気象パラメータや同じ風力センサーを違った高さで測定することもできる。この風力計は瞬時の風速を3秒ごとに平均化し更に指定した記録間隔で平均した値を記録する。風向データも同様に3秒ごとのベクトル風向を指定した記録間隔で平均化した値を記録する。

 

 

3.設置場所(Bonney Hill, Hamilton, NY)

設置場所は北緯42°50’130”、西経75°31’004”高度1520フィートに位置するIan Helfant教授の自宅屋上を選んだ。これらの位置情報は携帯式GPSを使って取得した。機器の取り付けは5m鋼管を使い屋根にしっかりと固定した。マストの下部から取り付けキットとして供給された銅製ワイヤを取り付け、ワイヤ端末の銅製ロッドを地上に打ち込み接地をおこなった。選定した場所はコンピュータと近接しているのでデータの回収も容易でデータを常にチェックできテストサイトとしては理想的であった。

 

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Fig.2:設置後の風向風速センサー。写真にはデータ分析時に考慮すべき障害物の気が見える。

 

4.計測記録プログラム 

データの記録は5秒間隔で開始したが、その後10秒間隔に変更した。取得データはオンセット社のデータロガー操作ソフトHOBOwareを使い処理をおこなった。HOBOwareは設定した各々の記録間隔における最大風速、平均風速、風向のデータをグラフおよび数表で表現することができる。またデータをExcelなどの数表ソフトへエキスポートすることも容易におこなえる。

 

大学の学期期間の制約がある中で取得したデータが信頼できるものであるかを判断するために第3者の取得した年間平均風速データと比較する必要があった。そのためには、できるだけ我々の測器を設置したニューヨーク、Hamiltonに近く地形が似ている場所のデータを毎日計測して算出した年間平均データが必要だった。

 

5.データ解析

運用が完了すると直ぐに計測したデータと第3者のデータを比較できるようデータ編集をおこなった。設定した短い記録間隔(最初の運用は5秒、2回目の運用は10秒)では膨大な数の計測データとなった。データを扱い易い数まで減らすため5分間の平均値処理をおこなった。データは更に日平均処理(第3者データと比較できるよう)および総平均処理をおこなった。結果として得られた総平均値は4.491867079 mph(マイル/ 時)となった。

 

次に第3者データとしてColgate大学ヒーティングプラントの風力計データとWeather Undergoundが提供するHamilton地区のデータを検討した。ヒーティングプラントの風力計データは日平均値で、記録データは2007年5月1日から2008年4月29日までの約1年間にわたり利用でき、この期間における総平均値は4.5301676 mphだった。一方、Weather Undergoundの情報は我々の風力計が運用されていた全期間の日平均値がオンラインで入手できた。同期間の総平均値は0.946153846 mphであった。

 

これら3地点の平均値を比較すると大まかな傾向が見て取れる。最初に言えることはヒーティングプラントとBonney Hillの風力計で取得したデータは比較的近似であり、この2地点はほぼ同じと考えられる。しかしWeather Undergoundの平均値とヒーティングプラントおよびBonney Hillの値を比較すると大きな相違があることに気が付く。低い平均風速値を記録したWeather Undergoundは高度が影響していることは間違いないと考えられる。なぜならWeather Undergoundの高度は他の場所と比べて1134フィート(約340m)低かった。それでもなお他の場所と比べ非常に大きな違いがあったのでWeather Undergoundには何か計測に影響を与える大きな障害のあることが疑われる。

 

これらのことから次回はBonney Hillの風力計に影響を与えた可能性のある障害物についても考慮する必要がある。まず分かっている障害として、ある期間において風速、瞬間最大風速がゼロで動いていない領域があるということ。例えば3/27/08 19:51:44 ? 3/28/08 10:33:09の間。これは風速計のカップが凍結して動かなかったことが原因と考えられる。

 

我々の作業部会内の地理学者によって実施されたColgate地区風力資源分析調査で分かったことを考慮して次はSeymour Pondに隣接するLebanonタウンのBewkes地区に風力計を設置したいと考えている。この新しい観測場所に設置するには少なくとも地上から33フィートの延長タワーを必要とする。理想的にはこの観測場所で1年間を通してデータを取りたい。風力計はデータを解析するにあたり障害物の要素を排除できるよう周囲の開けた土地の中央に設置する予定。現時点においては収集したデータに与えるエラーファクターが存在し計測期間も短いこともあり今回の分析に関しての結論を急ぐべきではないと考えている。新しい観測場所でのプロジェクトは2008年5月から6月にかけて開始の予定。Bewkes地区での年間を通した観測をおこない比較分析を実施した後に結論を出せると期待している。

 

HOBO and Onset are tredemarks of Onset Computer Corporation, Bourne, Massachusetts(USA)

 

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