製品情報

データロガーが酒造用水の保護活動に寄与

分野:地下水調査
組織:スミカワ研究所
適用:酒造用地下水の保護・保全活動

伝統的な日本酒を造るには、米と水の2つの原料が必要です。そのため、日本を表する酒どころの灘五郷が、良質の地下水を有し、その地下水で灘五郷の名産である高品質の日本酒を生み出していることは不思議ではありません。


 
特別な地下水を生み出す要因として、北に六甲山系、南に大阪湾を望む地形があります。川の氾濫によって作られた灘の地層は、透水層(水を通しやすい地層)と難透水層(水を通しにくい地層)の複雑な組み合わせからなります。ここで形成された複雑な地層が、「水みち」と呼ばれる独特で珍しい地下水の流れを作ります。
 
灘五郷は、神戸市と大阪市といった、主要な高速道路や鉄道を含む都市開発エリアに挟まれた地域にあり、それらの開発が、常にこの貴重な地下水に対する潜在的な脅威となっています。スミカワ研究所(西宮市)では、1954年以来ずっとこの地域の良質な地下水を保護し、保存するための調査を行っています。
 
都市開発に伴う建設工事が地下水に与える影響を把握するため、スミカワ研究所のスタッフは、水温、水位、水質といったデータを採取し、解析しています。
データを取得するため、以前は、フロート式のチャート水位計を使用していました。チャート水位計はリアルタイムで計測値が確認できるメリットがある反面、温度や湿気がインクに悪影響を及ぼすことがありました。また、記録紙は劣化しやすいだけでなく、ナメクジが記録紙を噛んだり、紙上を這ったりして、データを不鮮明にしてしまうことがたびたびありました。

 
そのため、スミカワ研究所のスタッフは、ほかにも数々の記録計、データロガーを使用してきましたが、データを回収する際にパソコンが必要で、雨などの天候に左右されやすいといった欠点がありました。
 
そして現在、スミカワ研究所では、400箇所以上の観測孔の深さ3m~45mに「HOBO U20ウォーターレベルロガー」を設置し、水温と水位のデータを取得しています。堅牢でコンパクトなU20ウォーターレベルロガーは、防水型データ回収機「ウォータープルーフシャトル」で簡単にデータ回収、再スタートが行えるため、フィールドにパソコンを持っていく手間と、それに伴う天候のリスクから解放されました。

スミカワ研究所では、観測場所や状況によって、1分~1時間インターバルで取得したデータを1週間~1カ月の頻度で回収し、解析しています。その際、研究所で分析するための水質サンプルも同時に採取します。

スミカワ研究所は、HOBOのデータロガー使用する利点として、バッテリー寿命が長く、丈夫でコンパクト、コストパフォーマンスが高い点を挙げています。加えて、ユーザー側で、あらかじめ記録開始日時や計測インターバルを設定することができるため、地下水に影響を与える工事と計測データとの関連性を時系列で評価することができる点があります。
こうして得られた細かいデータによって、観測エリア内で見られた地下水位の低下と近隣の工事での揚水との因果関係を突き止め、工事内容を見直しさせた事例もあります。
 

現在、スミカワ研究所は、計測アイテムとしてHOBO U24電気伝導率ロガー、HOBO MX2501 pHロガー、HOBO U26溶存酸素ロガーを加え、測定精度を上げた地下水調査を進めています。そして、そこで得られた知見によって、過去から守られてきた高品質の日本酒を生み出す地下水の保護活動に努めています。

 

HOBO and Onset are tredemarks of Onset Computer Corporation, Bourne, Massachusetts(USA)

 

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