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21世紀の魚道

用途:水産研究
産業:USGS(アメリカ地質調査所)
組織:Silvio O. Conte Anadromous Fish Research Center

マサチューセッツ州プリマスへの初期ヨーロッパ人移住者はたぶんプリマス湾に流れ込む小川、タウンブルックにはなじみ深かかったはず。1700年代後期、小川の流れを利用して工業用電力開発のためダム建設が開始され、国家として初めての階段式魚道が設置された。

 

長い年月を掛けタウンブルック沿い6ヶ所にダムが建設された。これらの環境変化は海洋の遡上性魚が産卵のため内陸に移動するのを妨げた。同様の問題はニューイングランド海岸線で多く起こっている。

 

近年、国立海洋水産サービスはタウンブルックを元の状態に戻し、堰を撤去あるいは改修してエールワイフ、シャッド、ヤツメウナギ、ストライプバス、ニシンなど地元魚の遡上を増やす事業を予算化し計画が進行中である。この将来を見据えた計画には新型魚道の設計、魚や水位に関する電子式データロガーの運用も含まれる。

 

これまでの魚道は平底コンクリートあるいは金属や木製の階段状で、魚が上流に移動できるような構造(一般的に魚道と呼ばれる)となっている。ただし、この構造は流量による制限を受ける。例えば、流量が少ないと魚が泳ぐのには水深が浅くなりすぎ多くの魚種が遡上できなくなるという。

 

タウンブルックに設置された新式構造は自然型魚道と呼ばれ天然資材で作られ自然の生息環境に近い。「それは基本的には流れに岩石を配置した連続プールのようなもの」とアメリカ地質調査所、遡上性魚類研究センターで計画を主導するAlex Haro氏はいう。従来型魚道とは対照的に自然型魚道はV字断面構造で魚の動きに十分な深度が得られる。「このような魚道はヨーロッパでは一般的になってきているが、ここ北東地域でも採用が望まれていた。これらは比較的安価で、理論的にはより多くの魚種が遡上できるようになる。しかし、北東地域の魚種に対してはまだ誰もテストしていなかった。それを行うのが我々の計画だった」とHaro氏は説明する。

 

長さ75mの魚道が設置され3ヶ月間のモニター計画が始まった。調査グループは二種類の連続的なデータを必要とした。一つは魚道を通って遡上する魚の数、もう一つは水量。

 

グループがモニターの対象に選んだ魚種はエールワイフだった。過去の調査においては、魚道を通過する魚を人が数えたが、それは長期間連続で行うのに無理があり、人的エラーも起こった。今回の研究では400匹の個体にPITタグを移植した。タグは高速道路料金所で使う電子タグと同じようなもので、魚道10m間隔に取り付けたアンテナと受信機によって検知できる。

 

魚道を通過する水量をモニターすることも重要だった。調査チームは水量を計算するために使用選定したのはOnset社製ホボ水位ロガーだった。ロガーは葉巻形状をしたステンレス製デバイス。内蔵バッテリーで何年もの間使用でき、記録間隔もユーザで自由に設定できる。ロガーは1日24時間水位をモニターし、データは日付時刻とセットで記録されるので他のデータと関連付けて分析することができる。

 

グループはそのデータロガーが非常に使い易いことがすぐに分かった。「私はロガーのセットが入った箱を学生に手渡したところ、彼女は1時間以内に理解し、すぐに使用開始の準備ができた」とHaro氏はいう。ロガーはマウスを使ってクリックするだけでデータの記録間隔や計測開始時刻を予約でき、データ回収作業や回収したデータのグラフ化も簡単に行える。

 

計測には2個の水位ロガーを必要としたが、チームは3個のロガーを使用した。1個は魚道上流に、もう1個はデータの確認用として下流に、3個目は大気圧補正用として設置した。設置場所は多くの人が訪れ人目につきやすかったが、水位観測用ロガーは直径2インチのスチールパイプ内に収め川底固定したので、いたずらなどの問題はなかった。

 

データは毎週ラップトップコンピュータに回収し、専用ソフトHOBOware Proを使ってグラフ化、分析を行った。計測データは日付時刻がセットで記録されるので魚数カウントデータと比較分析が容易に行える。

 

Haro氏はホボ水位ロガーの性能、費用対効果、繰り返し使用可能、利便性などに非常に満足している。彼はコネティカット州の良く似たプロジェクトでもこれらのロガーを使い、来春には別のプロジェクトでも使用を計画している。「実物大の人工水路がある研究室でも使っており、通信ケーブルを必要とするロガーと比べ複雑な作業が必要なくセットアップがとても簡単だ」という。

 

総合的に、その新しい自然型魚道の性能結果は良好であった。新型魚道の評価期間中において約95%のエールワイフがその魚道を通って遡上を試みた。このことは自然型魚道が将来の河川復元計画において容認できる構造物になるかもしれない。

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HOBO and Onset are tredemarks of Onset Computer Corporation, Bourne, Massachusetts(USA)

 

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