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データロガーで収穫魚の保存管理

用途:海洋研究
産業:大学
組織:University of California at Barkeley

1998年4月にMark Erdmann博士がOnset社製ティドビット データロガーを使ってスラウェシ島マナド沖の海水温調査を開始したが、その調査が古代魚の発見に繋がった。

 

元々、博士はインドネシア北部において海洋甲殻類を生物種の指標として使い、珊瑚の活性をモニターしていた。温度データは種の広がり、変化を理解する上で重要なので、いくつかの場所を選び浅瀬から水深40mまでにティドビットを配置していた。

 

しかし彼の調査は、博士夫妻がマナドのフィッシュ・マーケットで大きなヒレを持った魚を見て劇的に変化した。彼らの見たのは地球上で最初の脊椎動物に関係のあると考えられる古代魚に属するシーラカンスだった。

 

この種の魚は8千万年前に絶滅したと考えられていたが、1938年に南アフリカ、イースト・ロンドン沖で魚網に掛かって捕獲された。当時それは、20世紀最大の動物学的発見として騒がれた。その40年後、今度はモザンビークのコモロ諸島沖でも捕獲された。以来200近いシーラカンスがコモロ諸島近辺で捕獲され、潜水艇を使ってフィルムにも収められている。

 

これが地球上での唯一の個体群と考えられているが、残念ながら個体数は急速に減少しつつあり、現在の生息数は200~300と見積もられている。1万km離れた場所で別のシーラカンスの個体群が発見されたとなると、それはシーラカンスにとって希望となる一方、進化論、生物地理学においてさまざまな疑問の幕開けとなる。しかしながら、Erdmann博士はフィッシュ・マーケットのその魚を自分のものにすることが出来なかった。出来たのは写真を3枚撮る事だけだった。本当にそれはシーラカンス?インドネシア海域のシーラカンス?別の種では?

 

Erdmann博士はその魚をどこで捕まえたか、それ以外に捕まえた事はないかを調べるため直ちに捕獲した漁師の捜索を開始した。彼の最終的な希望は、別のシーラカンスを捕獲し保存・研究することだった。スラウェシ北部の何十人もの漁師に聞き取りした結果、マナド沖の小島に住み、以前シーラカンスを捕まえたことがあると言う二人の漁師を見つけた。その内の一人は実際マナドのフィッシュ・マーケットで見たその魚を捕まえた漁師だった。二人とも鮫の漁師で若い火山島をベースに定置網漁をしている。定置網は多くの場合、水深200~300mに設置される。

 

コモロのシーラカンスは普通、水深100~300mで捕獲されている。水温は12~18℃を好むようだ。博士はティドビットを漁師の網に取り付け、魚にとっての適温である深さを決め、網を設置するようにした。水温は15℃位と決定し観測を数ヶ月続けたがシーラカンスは捕獲できなかった。しかし、1998年7月30日の朝、遂に漁師の一人が博士の元にシーラカンスを生け捕りにした事を、息せき切らせて知らせにやって来た。Erdmann博士はその魚を水中と水の外で写真を撮った。

 

魚は海面近くの高い水温と、捕獲によるトラウマから数時間で死んでしまった。研究のための組織サンプルを取り、体長1.2m、25Kgの魚体は冷凍された。その後個体は解剖され、現在はジャカルタに保存展示されている。

 

このインドネシア・シーラカンスの発見は1998年9月24日発行のネイチャー誌に発表され、写真はその表紙を飾った。その発見はナショナル・ジオグラフィック誌1998年12月号でも特集された。ディスカバー誌では、1998年度のトップ・サイエンス・ストーリの一つに入った。現在、採取した組織サンプルを分析中で、コモロ諸島で捕獲したシーラカンスのデータと比較する予定である。結果はネイチャー誌に発表される予定。

 

Erdmann博士はマナド近海の水温観測を続けるのと同時に、定期的に漁師の定置網にティドビットを取り付けマナド・ツア(火山島)をベースにした海水温を追跡調査している。最終的に博士は、この魚が現れるある特定の温度帯をつきとめたいと考えている。彼らはまた、潜水艇を使ってこの魚の生息地と個体数の調査を計画している。

 

この発見以降、Erdmann博士はインドネシアの他地域でもシーラカンスを見たと言う報告を受けている。博士はこれらの地域も訪問し水深100~300mの水温測定をし、シーラカンスに適した生息場所を特定したいと計画している。通常水温ロガーは釣り糸か魚網に取り付けて使用できる。この類の調査には、取り付けにおける限られた支援、計測器の紛失事故の起こり易い調査環境と言った状況を考えると、その信頼性、サイズ、価格面から判断してティドビットを使用することは理想的である。

 

元来のさんご礁の調査用では、ティドビットを計測したい場所に取り付け、1~3ヶ月間ごとにデータを回収している。さんご礁の水温調査では、さんご礁が置かれている現状と、どのようにすれば今後それらをより良く管理し、保護できるかについて理解を深める助けになるに違いない。シーラカンスの調査ではErdmann博士は、本当に他の個体群が存在するのかどうかを付きとめることと、その場合の生息地についてもっと知りたいと考えている。

 

傍注として、Erdmann博士からティドビット温度ロガーとそのアプリケーションソフトBoxCar Proについて感謝の意を頂いた。博士はティドビットを1998年6月よりブナケン島近海の深度3m、20m、40mに配備して使用している。これらのロガーは、この海域で最近大規模に発生しているさんご礁の白化現象の原因と考えられるラニーニョによる海水温の変化をモニターし、すばらしい時系列データを提供している。

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HOBO and Onset are tredemarks of Onset Computer Corporation, Bourne, Massachusetts(USA)

 

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