製品情報
バーモント州学校で暖房効率監査
用途:ビルエネルギー監査
産業:エネルギー
組織:Stead Energy Services
計画概要?
プットニーセントラル校(K-8グレード)はバーモント州Putneyに立地する。校舎は3つのウィング棟からなり、3基の給湯ボイラーにより暖房される構造で建設は1955-64, 1974 および1996年に成された。各々のウィング棟はゾーンA, B, Cとして区分され別々の暖房ゾーンとなっている。
データロガーは各々のボイラーの1日当たり稼働時間を測定するためオイルバーナ付近に取り付けられた。燃料分配はバーナ稼働時間と燃油の熱量の積で計算された。その後で燃料分配は相対暖房効率と各々のゾーンの燃料消費を求めるためにBtu/ft2-Yearに換算された。?
燃料分配はさらにBtu/ft2-Year-HDD(Heating Degree Day)に置き換えられた。この換算によってHDDに対して調整された暖房効率が示すことができる。もしその数値が5より小さければ建物の暖房効率は良好ということとなる。反対に数値が5より大きければ改善の余地があるということを示し、更なる調査と改善が要求される。
そのエネルギー監査はプットニーセントラル校で2008年に実施された。エネルギー性能はTrane Trace 700ソフトウェアを使ってコンピュータでモデル化された。評価はそのコンピュータモデルとデータロガーでの測定換算値を比較した。コンピュータモデルは関連事項を予測して作成されたが、予想された建物の暖房性能は正しくないことが分かった。結果としてコンピュータモデルはデータロガーで得たデータを使った計算値と比べ7~42%の相違があった。
データロガー計測?
モータ稼働時間記録ロガーを暖房ゾーンA, B, C各々のボイラーに取り付け、2009年4月1日に記録を開始し5月7日にデータを回収した。
ボイラーAは1957年と1964年に建設された体育館とフロントウィング棟を、ボイラーBは1974年建設の中央棟、ボイラーCは1994年建設のウィング棟のために稼働している。ボイラーAは燃焼終了後1分間のパージサイクルがあるため、この時間はバーナ稼働時間から差し引いた。
データの分析は記録期間中最も寒い日であった4月13日を選んで行った。その日の最高気温は39.3°F(4.0℃)、最低気温31.0°F(-0.6℃)であった。2009年4月13日の燃油消費量と燃料分配を表1に示す。
●表1:2009年4月13日の各ゾーン燃料分配
ゾーン | ガロン | % |
---|---|---|
A | 43.5 | 65.5 |
B | 12.9 | 18.7 |
C | 10.9 | 15.8 |
合計 | 69.1 | 100.0 |
年間燃料消費量14,500ガロンで推定した各ゾーンの年間燃料分配と熱負荷を第2表に示す。
●表2:各ゾーンの熱負荷
ゾーン | % | 年間消費ガロン | ゾーン面積ft2 | Btu/ft2-Yr | Btu/ft2-Yr-HDD |
---|---|---|---|---|---|
A | 65.5 | 9,500 | 26,219 | 50,000 | 6.9 |
B | 18.7 | 2,710 | 3,120 | 119,900 | 16.7 |
C | 15.8 | 2,290 | 12,212 | 25,900 | 3.6 |
合計 | 100.0 | 14,500 | 41,551 | – | – |
(注記)ft2はボイラーがサービスする暖房区画面積。Yr: 年。HDD: 年間熱温度日。プットニー校のHDDは年間7,200HDDを基準としている。Btu/ft2-Yr-HDDが5以下であれば暖房システム効率が良好。Btu/ft2-Yr-HDDが5以上であれば暖房システム、建屋構造に対し改善の余地があることを示す。
データ解釈
中央棟のボイラーBが16.7 Btu/ft2-Yr-HDDと最も高い熱負荷を示した。その区画は外側が高い壁があり、広い芝生で囲まれた入り口廊下を含んでいる。総合暖房効率は低いと考えられる。
体育館とフロントウィング棟のボイラーAが6.9 Btu/ft2-Yr-HDDとその次に高い熱負荷を示した。ボイラー自体は熱負荷に対して容量が大き過ぎ、交換を検討すべきと考えられる。またボイラーを交換する前に断熱、空調、換気ユニットの改善が必要と考えられる。
新ウィング棟のボイラーCは3.6 Btu/ft2-Yr-HDDとより良い断熱材、断熱窓構造および熱回収換気システムを反映して最も低い値を示した。ただしボイラー容量は大きすぎる。ボイラーCでボイラーB区画もサービスし、ボイラーBは撤去することを検討すべきと考えられる。ただし暖房システムの改修前にボイラーCの換気ユニットの改善を行う必要があると考えられる。
コンピュータモデルとのデータ比較
校舎のエネルギー性能はTrane Trace 700ソフトウェアを使ってモデル化された。モデルと実際の性能の比較は第3表に実際の相違率を%で示した。
●表3:モデル性能と実際性能の比較
ゾーン | モデル化燃料分配% | データロガー測定での燃料分配% | 相違率%超過(過少) |
---|---|---|---|
A | 52.5 | 65.5 | 24.8 |
B | 20.1 | 18.7 | (7.0) |
C | 27.4 | 15.8 | (42.4) |
第3表から分かるように各ゾーンのモデル性能は実際性能に比べて7~42%の相違がある。この例で使用された性能予測モデルは正しくないと言える。このようにモデルを基準としたエネルギー管理は現在および将来のビル性能を正しく反映していないと思える。
結論
デーロガーはローカルスクールの暖房区画3箇所に対する燃料分配を判定するため運用された。結果はビル暖房効率としてBtu/ft2-Yr-HDDに換算され、各々の区画は3.6~16.7 Btu/ft2-Yr-HDDで異なった数値であった。
数値が5より小さければ暖房システムと建物の断熱効率が比較的良好であることを示す。反対に数値が5より大きければ暖房システムと建物の断熱効率に改善の余地があるということを示す。3.6 Btu/ft2-Yr-HDDと低い数値であった区画は1994年に建設された新しいウィング棟で、良質な断熱材を使い、断熱窓構造と熱回収式換気システムを使っていた。16.7 Btu/ft2-Yr-HDDと高い数値であった区画は広い芝生で囲まれ、気象変動に対し脆弱な入り口があり、また効率の悪いボイラーを使用し断熱施工がほとんどなされていなかった。
データロガーを使って計測した実際の暖房効率はコンピュータモデルのビル暖房性能と比較された。コンピュータモデルは実際性能に対し7~42%の相違があることが分かった。
データロガーは実際のビル性能を決定するために簡単で正確な方法を提供するツールと言え、ビル性能の基本データを取得することが出来る。この基本データから実際のビル情報と合わせエネルギー管理対策(ECMs)を提案することができる。また続いてエネルギー削減効果もデータロガーを使って計測、確認することができる。
著者略歴
Craig Steadは30年以上エネルギー分野に従事してきた。現在の会社、Stead Energy Servicesは学校、水処理プラント、その他商業建築向けのエネルギー効率および管理に関連した事業に集約している。
学歴
?Cornell University, Ithaca, NY, BS, Masters of Engineering (Chemical)
Western New England College, Springfield, MA, MBA
Building Performance Institute, building analyst training
Association of Energy Engineers; Comprehensive training for energy managers
資格・証明
Professional Engineer, Civil & Sanitary, VT, MA
Building Performance Institute, Certified Building Analyst
Association of Energy Engineers(AEE), Certified Energy Manager
Heat Spring Institute, Certified Heat Pump Installer
?
HOBO and Onset are tredemarks of Onset Computer Corporation, Bourne, Massachusetts(USA)
製品に関するお問合わせは、お問合せフォームをご利用ください。